「舞姫」学び合いもどき(24)

第10段落を深める

 豊太郎の家に来た相沢は驚いただろう。そこにエリスがいて看病している。しかも、襁褓の用意まである。これがばれたら、豊太郎の帰国や出世はもちろん、自分の身も危うい。豊太郎と共謀したとは思われないかもしれないが、簡単にだまされるような秘書は首だろう。

 当然、大臣にはエリスのことを隠して時間稼ぎをしながら、今から善後策を打たなければならない。エリスに真実(別れる約束と帰国の承諾)を告げれば、豊太郎が出世するならと身を引いてくれるだろう。本来なら豊太郎が回復後自分から言うべき問題だが、弱い心の豊太郎は無理だろう。だから、俺がやらなきゃ誰がやる?相沢には愛の強さを理解できない。

 エリスは裏切られたショックから発狂する。暴れるが、襁褓を持たせるとおとなしくなったり、豊太郎に薬を上げることばかり気にしている。つまり、エリスの記憶は、裏切られる前の美しい形で永遠に残るのだ。これは幸福なのか不幸なのか。

 豊太郎は生きる屍のエリスを抱きしめて涙を流す。もし、エリスが正気だったら、指一本触れることができないだろう。エリスの発狂は豊太郎にとってはこの上ない結末だった。

 そして、豊太郎は帰国の途に付く。エリスへの愛は残っているだろう。相沢に対しても親友と思う反面、今でも相沢憎む心があると告白する。

 でも、どうして相沢が恨むのか。

 相沢がエリスに真実を伝えたから発狂した?でも、それって自分の仕事だろう。それを肩代わりしてくれたにすぎない。逆恨みである。

 遡るなら、相沢が豊太郎に手紙を寄こして帰国・出世の再チャレンジの機会を作り出したこと自体が、余計なお世話だったということになる。でも、学問がしたい豊太郎が、貧しくても親子水入らずの生活に満足できるだろうか。

 では、なぜ豊太郎が恨んでいるのか。

 もとい、大作家の鴎外がこんなベタな終わらせ方をしているのか。

10.《板》③エリスを残して帰国するについて

 ⑴【L3】豊太郎のエリスに対する気持ちは。

  ・罪悪感。

  ・少し安心している。

   ・発狂したのだから強引に引き止められなくてすむ。

 ⑵【L1】豊太郎の相沢に対する気持ちは。

  ・相沢を憎む心が今日まで残っている。

  【説】これが「人知らぬ恨み」である。

 ⑶【L4】なぜ、豊太郎は相沢を憎んでいるのか。

 ⒜エリスを発狂させたから。

  ・相沢が言わなければ、いずれ豊太郎が言わなければならなかった。

  ・相沢に自分の責任を転嫁していることになる。

 ⒝再び出世の道を開いたから。

  ・エリスが妊娠した時に将来に不安を覚えていた。

  ・エリスとの破局はいずれやって来たはずである。

 ⒞エリスと別れる約束をさせたから。

  ・いずれ、現実に負けて愛は冷めるかもしれない。

  ・結果的には、豊太郎はエリスから直接非難されなくてすむ。

  ・にもかかわらず、責任転嫁である。

11.【指】漫画とハーレクインスロマンス風舞姫を配布する。